【上五島】 青方郷の六地蔵塔
青方郷の上ノ山墓地に、六地蔵塔なるものがありました。
▲こちらが上ノ山墓地。
▲場所はこのあたりです。
▲案内板によると、この六地蔵塔は肥前型六地蔵塔といわれるもので、五島全体で6基
あり、新上五島町にはその内の2基がここ青方郷と、若松島の間伏郷内にあります。
この他、有川の太田郷にも1基確認できますが、詳しくはこちら ↓ をご参照ください。
【有川】 太田墓地にある六地蔵塔 - スメルズ for Kamigoto
▲もともと上ノ山墓地の六地蔵塔は、青方郷内・元浜地区の長福寺にあったそうです。
▲場所はこちらです。
▲この六地蔵塔は、青方氏16代当主・太田雅盛(のちに青方姓に複す)が、父の
15代・太田玄種(はるあき)を供養するために建立したと伝えられているそうです。
▲上ノ山墓地には15代・玄種と、その夫人のお墓がありますが、玄種は青方を治めた
青方氏最後の領主で、元和5年(1619年)に亡くなりました。16代・雅盛以降の
当主は、福江藩主からの命令で福江城下に移っています。
ほとんど確認できませんでしたが六地蔵塔の上竿には、
七分全徳 大尤源廣居士信男
と刻まれているそうで、「大尤源廣居士信男」は15代・玄種の戒名だそうです。
「七分全徳」の「七分」とは、こちらのサイト→ 先祖供養 によりますと、
「お供養の功徳を七とすると、その七分の一がご先祖に及び、残りの七分の六が供
養した人に及ぶ」
という先祖供養の功徳を、仏典では七という数字で表しているそうです。
つまり「七分全徳」とは、「七分」の功徳を全部自分のものにしたい!という意味の
ようですね。
また、「地蔵菩薩本願経」という書物には「逆修(ぎゃくしゅ)を行うと七分の徳を
すべて得ることができる」と説かれているそうです。
「逆修」とは、生前にあらかじめ自身の死後の冥福を祈念する仏事のことだそうですが、
つまりこの六地蔵塔は供養のために建立されたのではなく、実際には「15代・玄種
(戒名「大尤源廣居士信男」)自身が、七分の徳をすべて得ることができるように、
生前に逆修を行い六地蔵塔を建立した」と考えることができるそうです。
以上のことから、青方郷の六地蔵塔の建立年代は、15代・玄種存命中の16世紀後半
から17世紀初頭とされています。
▲地蔵塔の龕部(がんぶ)には、人の心に住むという善悪の業、地獄道、餓鬼道、畜
生道、阿修羅道、人道、天道、の六つの世界の様子を表す地蔵が彫られています。
こちらが「六地蔵」と言われる所以でしょうね。
現在も郷民からは「ロクイゾ(六地蔵)さま」と呼ばれ、崇められているそうです。
▲また、毎年8月14日に青方郷で行われる「念仏踊り」の最後の奉納も、この六地
蔵塔前で行われるそうです。
▲最後に少し気になったんですが、六地蔵塔の傍に首のない仏像が2体ありましたが、
これは何か由来があるんでしょうか?
▲よく見てみると怖いです。またの機会にしましょう。
【参考文献リスト】
・上五島町郷土誌(昭和61年)
・先祖供養