白魚四代記 その6
青方氏の策略にハマって娘婿・吉村半右衛門を勘当した白魚氏2代・行覚。それから
3年半後、白魚氏は約一世紀の栄華に突如として幕を下ろすことになります。
実は前回の「鍋つる事件」の件あたりから、確証の得られる白魚氏に関する資料や古文書
といったものが全くないそうです。ですので、「鍋つる事件」以降のお話は、白魚氏の
口伝や伝承をまとめた「白魚盛衰記」をネタ元に進めたいと思います。
決戦は大晦日
▲吉村半右衛門とその妻は、白魚の北に位置する宿ノ浦に密かに居を構え、青方氏と
情報を交わして機を待ちました。
▲建長8年(1256年)の白魚氏の分家以降、その勢力は青方氏を凌ぐどころか、
その高慢な態度に本家としてのプライドを傷つけられた青方氏は、「倍返しだ!」と
ばかりに白魚への攻撃を決定。
Xデーは正平13年(1358年)大晦日となりました。
▲居を構える宿ノ浦で指令を受けた吉村半右衛門は、妻に内緒で戦支度をはじめます。
敵情を知り尽くす半右衛門は、夜襲をかけて寝こみを襲う作戦を立てました。
いよいよ出陣が迫る大晦日の夕刻、半右衛門は白魚総攻撃を妻に打ち明けます。
女の一念 海をも泳ぐ
妻の哀願する叫びを無視して、吉村半右衛門の出陣する舟は宿ノ浦を出航しました。
妻は一刻も早く青方勢の来襲を父・行覚に報せるべく、磯伝いに駆けました。
▲宿ノ浦から岬となる松ヶ鼻、湾曲する赤波江を廻って亀石鼻にたどり着いたとき、
すでに辺りは夜の闇に覆われていましたが、妻は極寒の真冬の海中に身を投じ、泳いで
白魚まで渡ったそうです。
無我夢中で白魚まで泳ぎ切った妻は、父・行覚に青方勢の来襲を告げました。
→ 白魚四代記 その7につづきます
【参考文献リスト】
・白魚盛衰記(近藤章)